動物愛護管理法」という法律の名を耳にされたことがある方は多いかと思います。

正式には、「動物の愛護及び管理に関する法律」といい、「動物愛護法」という略称でも知られています。私たち、ペットの飼い主にも、非常に深く関わっている法律です。

人間と動物が共に生きていける社会を目指す

動物愛護管理法は、その目的を「動物虐待等の禁止により『生命尊重、友愛及び平和の情操の涵養に資する』こと(動物愛護)、動物の管理指針を定め『動物による人の生命、身体及び財産に対する侵害を防止する』こと(動物管理)」であるとしています。

また基本原則としては、すべての人が「動物は命あるもの」であることを認識し、みだりに動物を虐待することのないようにするのみでなく、人間と動物が共に生きていける社会を目指し、動物の習性をよく知ったうえで適正に取り扱うよう定めたもの、となります。

同法の概要は、以下の通りです。

□ 動物の所有者又は占有者の責務等
□ 動物販売業者の責務・規制
□ 多数の動物の飼養又は保管に起因して周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態に対する処置
□ 特定動物の飼養又は保管の許可
□ 動物愛護担当職員
□ 犬及び猫等の管理
□ 動物愛護推進員

飼い主の「終生飼養」の責任が明確に

次に、飼い主に関係の深い項目について見てみましょう。同法では、

「動物の飼い主は、動物の種類や習性などに応じて、動物の健康と安全を確保するように努め、動物が人の生命などに害を加えたり、迷惑をおよぼすことのないように努めなければならない。また、みだりに繁殖することを防止するために不妊去勢手術などを行うこと、動物による感染症について正しい知識を持ち感染症の予防のために必要な注意を払うこと、動物が自分の所有であることを明らかにするための措置を講ずることなどに努めなければならない」

としています。なお、動物の所有情報を明らかにするために、マイクロチップなどの装着も推進しています。

2013年9月の改正では、飼い主やペット業者の責任や義務が強化されています。実物を見せないまま販売することは禁止され、飼い主はペットが死ぬまで飼い続ける責務があることなどが盛り込まれました。

改正された動物愛護管理法では、動物の飼い主は、その動物が命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」の責任があることが法律上明確にされています。飼い主の終生飼養の徹底のポイントとしては、

□ 動物の所有者の責務として、動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(終生飼養)を明記
□ 動物取扱業者の責務に、販売が困難になった動物の終生飼養を確保することを明記
□ 都道府県などは、終生飼養に反する理由による引取り(動物取扱業者からの引取り、繰り返しての引取り、老齢や病気を理由とした引取りなど)を拒否が可能となった

となります。

犬と猫は、生後56日未満の販売が禁止に

そのほか、動物取扱業者は動物の販売に際して、あらかじめ動物の現在の状況を直接見せること(現物確認)、および対面でその動物を適切に飼うために必要な情報を説明すること(対面説明)が義務付けられています。

動物の購入にあたっては、その動物を自分の目で確認し、販売業者からその動物の病歴、飼い方や不妊去勢に関すること、寿命などの説明を受け、最後まで責任を持って飼える場合にのみ、その動物を購入することが求められます。

犬および猫については、生後56日(平成28年8月31日までは45日、それ以降別に法律で定めるまでの間は49日)を経過しない場合の販売などが禁止されます。購入前に生年月日を確認し、一定期間親兄弟と過ごしているかを確認することが重要となります。

また、飼い主には終生飼養の責任があり、どうしても飼えなくなった場合には、自分で新たな飼い主を探す、動物愛護団体に相談するなどして、譲渡先を見つけることが求められます。

愛護動物をみだりに殺傷・遺棄することは犯罪であり、改正動物愛護管理法により、罰則が強化されました(みだりな殺傷…200万円以下の罰金など、遺棄…100万円以下の罰金)。みだりに給餌や給水をやめたり、酷使したり、病気やけがの状態で放置したり、ふん尿が堆積するなどの不衛生な場所で飼ったりするなどの行為は「虐待」であり、動物を虐待することは犯罪となります(100万円以下の罰金)。

ほかにも、特定動物を飼う場合や多数の動物を飼う場合、災害時の対応など、飼い主として知っておかなければならない項目が多く含まれています。ペットを飼う上で、ぜひとも一度目を通しておきたい重要な法律です。

改正動物愛護管理法のポイント

◆編集部追補:動物愛護管理法の改正(2019年(令和元年)6月公布)について

2019年(令和元年)6月19日に「動物の愛護及び管理に関する法律等の一部を改正する法律」が公布され、2020年6月1日、2021年6月1日の3段階にわけて施行されました。主なポイントを記載します。

● 動物の所有者(又は占有者)の責務規定の明確化
環境大臣が定める『動物の飼養及び保管に関しよるべき基準』を、動物の飼い主さんが守るべきであることが明確化され(動物の適正な取扱いに関する基準)ました。

● 適正飼養のための規制
不適正飼養で周辺の生活環境が損なわれている場合、行政(都道府県知事)は、改善に必要な指導や助言を行うことができるようになり、動物の飼養又は保管者に、報告を求めたり立入検査を行うことができるようになりました。多数に限らず一頭のみの飼養又は保管であっても、措置の対象とすると記載されています。(例えば、1頭であっても吠え癖のある犬による頻繁な吠え声の発生の放置は措置の対象になり得る。)

● 特定動物に関する規制
ペットとして、特定動物を飼養又は保管することは禁止になり、『特定動物』と『それ以外の動物』を掛け合わせて生まれた動物も『交雑種』として規制対象になりました。(※2020年(令和2年)5月31日までに許可を受けてペットとして飼育している場合は、引き続き飼育可能)

● 犬猫の繁殖制限の義務化
犬や猫の所有者は、みだりに繁殖して適正飼養が困難になるおそれがある場合には、繁殖防止のために避妊去勢手術などの措置を行うことが義務化されました。

● 動物虐待の厳罰化
罰則が引き上げられ、殺傷は5年以下の懲役又は500万円以下の罰金(改正前:2年以下の懲役又は200万円以下の罰金)虐待・遺棄:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(改正前:100万円以下の罰金)となっています。動物虐待には『みだりに愛護動物の身体に外傷が生ずるおそれのある暴行を加え、又はそのおそれのある行為をさせること。』及び『飼養密度が著しく適正を欠いた状態で愛護動物を飼養し又は保管することにより衰弱させること。』が加えられています。

● 所有者不明の犬及び猫の取扱い
都道府県は、所有者の判明しない犬・猫の引取りを拾った方から求められても、周辺の生活環境が損なわれている事態が生ずるおそれがない場合、引取りを拒否できるようになりました。

● 動物愛護管理センターの業務内容の規定
都道府県に設置される動物愛護管理センター等の業務内容が次のとおり規定されました。
・動物取扱業の登録、届出、監督等に関すること。
・動物の飼養又は保管をする者に対する指導、助言、勧告、命令、報告の徴収及び立入検査に関すること。
・特定動物の飼養又は保管の許可及び監督等に関すること。
・犬及び猫の引取り、譲渡し等に関すること。
・動物の愛護及び管理に関する広報その他の啓発活動を行うこと。
・その他動物の愛護及び適正な飼養のために必要な業務を行うこと。

● 地方公共団体で「動物愛護管理担当職員」の設置が義務化
都道府県・政令市・中核市等では動物の愛護及び管理に関する事務を行う『動物愛護管理担当職員』の設置が義務付けられ、その他の市町村では、その設置が努力義務となりました。都道府県知事等による動物愛護推進員の委嘱が、努力義務になりました。

● 獣医師さんによる虐待の通報が義務化
獣医師さんが業務中に「みだりに殺されたと思われる動物の死体」又は「みだりに傷つけられ、若しくは虐待を受けたと思われる動物」を発見したとき、都道府県知事その他関係機関(市区町村・警察)に「遅滞なく」通報することが義務化されました。

● 関係機関の連携強化と国による財政措置
国は動物の愛護及び管理に関する業務を担当する地方公共団体や、民間団体等との連携を強化し、地域の犬猫等の動物の適切な管理に関する情報提供等、必要な施策を講ずるよう努めることとされました。また国は、地方公共団体が動物の愛護及び適正な飼養の推進に関する施策を策定し、それを実施するための費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとされました。

動物取扱業者が遵守する具体的な基準の設定
具体的な基準の内容(動物の適正な飼養管理方法等に関する検討会

●幼齢の犬猫の販売制限に係る緩和措置廃止
2012年(平成24年)の法改正で設けられた緩和措置が廃止となり出生後56を経過しない犬猫を販売のために引渡し又は展示することが禁止されます。

●2022年(令和4年)6月1日施行分~「マイクロチップ装着」の義務化
犬猫等販売業者、犬猫の飼い主は、マイクロチップに関する次の事項が義務化されました。

・犬猫等販売業者が犬猫を販売する場合、その犬猫にはマイクロチップを装着する。
・犬猫にマイクロチップを挿入した者が、その情報の登録を受ける。
・登録を受けた者が、その登録した情報に変更が生じたときに、変更登録を受ける。
・登録を受けた犬猫を取得した者が、変更登録を受ける。
・登録を受けた犬猫の飼い主さん、その犬猫が死亡した際にはその旨を届け出る。

また登録を受けた犬の所在地を管轄する市町村長は、その犬の登録又は変更登録についての通知を受けた場合、特例としてその犬に装着されているマイクロチップは狂犬病予防法に規定する「犬の鑑札」とみなすことになっています。

マイクロチップ義務化の詳細については「犬と猫のマイクロチップ情報登録」制度(環境省HP)をご覧ください。

 

 

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