メスの飼い猫が、いつもより水をたくさん飲み、おしっこの量も多く、陰部から膿が出たり悪臭がする、あるいはお腹がふくれているようであれば、子宮の内部に膿がたまる病気「子宮蓄膿症」の疑いがあります。

子宮蓄膿症の症状

子宮蓄膿症は、「子宮頸管(しきゅうけいかん)」が開いているか閉じているかで、大きく「開放型」と「閉鎖型」に分けられます。典型的な初期症状は多飲多尿で、水をたくさん飲み、尿の量が増えます。 病状が進行するにつれ、子宮に膿がたまりお腹がふくれる、元気がなくなる、嘔吐や下痢などの症状が現れます。

「開放型」では、外陰部から大量に膿が漏れだし、お尻から陰部、後ろ足に悪臭をともなった汚れが見られるようになります。

「閉鎖型」は、より深刻です。膿が外に漏れないため、気付かれないまま膿が子宮内にたまり、手遅れになってしまうケースがまま見られます。膿がたまってくることでお腹がふくらみ、触ると痛がるなどの症状が現れます。

たまった大量の膿で子宮が破れ、腹腔に漏れだした場合には、ショック症状や急性腎障害、多臓器不全、腹膜炎などを起こし、多くの場合は短時間で死に至ります。

子宮蓄膿症の原因

子宮蓄膿症は1歳程度の若い年齢でなることもありますが、多くは5歳以降に見られる病気です。

発情期には子宮の頚部が緩み、外部から病原菌が進入しやすくなります。細菌の侵入を受けた子宮は、防御反応として内膜に炎症を起こし、これが「子宮内膜炎」となります。通常であれば子宮への細菌感染が起こることはありませんが、妊娠の準備をする発情期は精子を受け入れやすくするため免疫機能が低下します。その結果、細菌にも感染しやすくなってしまい、子宮内膜炎を発症する可能性が高まります。

 

子宮蓄膿症は、この子宮内膜炎が長引き、子宮内に膿がたまってしまった状態のことを指します。発情の終了や分娩後に子宮頸管が閉じることで大腸菌、ブドウ球菌、サルモネラなどの子宮内膜炎の原因菌が子宮内で増殖し、子宮蓄膿症を引き起こします。

子宮蓄膿症の治療方法

基本的には、卵巣と、膿のたまった子宮を摘出する外科的治療が一般的となります。子宮蓄膿症は、症状の進行がとても早く、早めに手術をすることで助かる確率が高くなります。

猫の状態によっては、薬剤を注射して子宮の収縮作用を高め、膿を排泄させる内科的治療を行う場合もありますが、再発の可能性もあるため、根治のためには手術を選択したほうが良いでしょう。

子宮蓄膿症の予防方法

いちばんの予防方法は、避妊手術をすることです。避妊手術をしていなくても、定期的に妊娠・出産をすることでかかる確率は低くなりますが、将来的に子どもを作る予定がないのであれば、できれば1歳になる前に避妊手術を実施しましょう。

また避妊手術を行うことで、子宮蓄膿症だけでなく、子宮がんや子宮内膜炎などの子宮感染症や、乳腺腫瘍の予防をすることもできます。

子宮蓄膿症は早期発見、早期治療によって完治が可能です。前述の通り「閉鎖型」では症状が気付かれにくく、「開放型」であっても、陰部から漏れる膿を自分で舐めとってしまう場合などは発見が遅れてしまいます。避妊をしていない高齢の雌で、元気がなく、食欲不振でお腹がふくらみ、水ばかり飲んでいるなどの様子が見られるようであれば、早めに獣医師の診断を受けるように心がけましょう。

 

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子宮蓄膿症

 

東京猫医療センター 院長

服部 幸

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