異物誤飲は猫と生活する中で、遭遇することの多い事故のひとつです。私たちの生活の中には、猫が口にすると危険なものがたくさんあります。人間の幼児と同じように、猫も好奇心から何気なく口にして飲み込んでしまうことも多いです。誤飲したものは自然に排出されることもありますが、開腹手術を必要とする場合もあります。また発見が遅れると命を落とすことも少なくありません。
こんな症状が出たら気をつけて
「ぐったりしていて元気がない」「食欲がない」「呼吸が苦しそう」「吐くしぐさをするが吐けない」「嘔吐(水を飲んでも吐く、頻回の嘔吐)」などの症状が見られると、消化管のどこかでものがつまっていることが予想されます。
ものが口に入って移動していくのは「喉」「食道」「胃」「小腸」「大腸」「肛門」の順です。異物誤飲した場合、最初の3箇所でものがつまってトラブルとなることが多いです。喉にものがつまると、気道を圧迫するので、息ができなくなってしまいます。また胃で詰っている場合は、胃の粘膜を傷つけます。異物が腸まで到達してしまうと、腸閉塞を引き起こしその箇所から壊死を起こすこともあり、命に関わることがあります。大腸まで到達すれば、そのまま通過することが多いです。
原因
誤飲しがちなものとしては、下記のものがあげられます。
布、ティッシュ、アルミホイル
糸、リボン
ウレタンマット
猫用のおもちゃ(特に咬みちぎれるもの)
輪ゴム、ヘアゴム、ピアス、イヤリング、ネックレス
ボタン電池
ビニール袋
首輪の鈴
串、ようじ、綿棒 など
基本的に猫の口に入るものは全て誤飲・誤食の可能性があると思ってください。その中でも猫の興味を引くおもちゃや音のなる鈴、キラキラ光るアクセサリー類、猫が好む食感のウレタン生地(フロアマットなど)は更に危険です。大きいから大丈夫と思っても咬みちぎって食べてしまう可能性を忘れないでください。
また、リボンや紐状のものを誤飲すると消化管を流れて行く中で一部がどこかにひっかかることでアコーディオン状に腸をたるませて、最終的に腸管を壊死、もしくはピンと張ったヒモが消化管を切り裂き、腹膜炎という致死的な状況を引き起こす可能性があります。針などの鋭利なものは胃や腸の刺さってしまい胃穿孔(胃の内容物が漏れ出る)や腸穿孔(腸壁に穴があくこと)を起こすことがあります。
治療方法
応急処置
異物がのどにつまって苦しがっている場合は、体を抱えて下を向かせ、背中を軽くたたいて吐き出させます。たたいても吐かない場合は、すぐにやめて病院にいかせます。針やとがったものを無理に出そうとすると危険です。ひも状のものを飲み込んだときは絶対に引っ張らないようにしましょう。また、意識のない場合やけいれんなど神経症状を起こしている重症の場合は吐いたものを喉に詰まらせることもあるので、処置はせず、すぐに病院に連れて行ったほうがよいでしょう。この際、飲み込んでしまったものの残りがあるようなら一緒に持っていきましょう。万が一、人間が飲む薬を猫が飲んでしまった場合は、パッケージなど薬についてわかるものを必ず持って行きましょう。
まさに口に入れた瞬間を見つけた際は大声で、だめ、と声をかけると驚いて飲み込んでしまうこともあります。まだ口の中にある場合は、ご飯やおやつ、他のオモチャ等で注意を引いて自ら離すようにしてあげてください。
動物病院での検査と治療
異物誤飲が疑われる場合は、最初にX線や超音波で画像診断を行います。
明らかに胃に異物がある状態で、吐きだせる異物であれば催吐処置を行うことがあります。催吐処置で異物を取り出せない場合、必要に応じて消化管バリウム造影検査を行い、消化管の通過状態を確認することもあります。 食道から胃にかけての場合は内視鏡(全身麻酔が必要です)で取り出せることもあります。内視鏡では取り出せないような異物、もしくは十二指腸より後ろにある場合は開腹手術を行うこともあります。
内視鏡で取り出せる場合は、体を傷つけることがないため、当日~翌日の入院で済むことも多いですが、開腹手術をした場合は、数日〜7日間程度の入院が必要になります。
予防方法
猫の目の届くところには危険なものを置かないということを徹底するほか予防策はありません。おもちゃも遊んだ後は片付けることを徹底し、焼き鳥の串等、匂いで惹かれやすいものもすぐに片付けましょう。一度誤飲・誤食をした猫は何度も繰り返す傾向が高いので気を付けてください。
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