人間は、ひとりでは生きていけません。社会を作り、それぞれの役割を担って生きています。ですから他者にどう見られているかを気にします。
一方猫は、基本的にひとりで生きる動物。ですから他者にどう見られているかを気にせず、自由気ままに行動します。
しかし、猫にまったく“社会”がないかというと……実はあるのです。そうして猫社会には、さまざまなルールがあるのです。

普段は出会わないように細心の注意を払う

 

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野生猫・野良猫のなわばりの簡略図。なわばりは完全に独立しておらず、重なっている部分があります。

 

●マーキングからの情報で行動

上記の図のように、猫のなわばりには重なる部分があります。猫は毎日パトロールをしますが、この共有部分では出会う可能性があります。
ですが、猫は極力、お互いに出会わないように細心の注意を払っています。それに使われるのは、マーキング。猫はなわばり内の樹木に爪とぎをしたり、おしっこをしたりして「自分の印」を残します。あとから通った別の猫は残されたマーキングの跡から「フンフン、アイツは○時間前にここを通ったな」という情報を得ます。そう、おしっこのニオイでどの猫がそこを通ったのかはもちろん、どのくらい前にそこを通ったかもわかるのです。猫は他の猫に極力出会いたくないため、新しいマーキング跡を見つけたときは、「今はここを通るのはやめよう」となります。

猫の毎日の行動パターンは決まっており、共有部分があっても、「午前中ここを通るのはAの猫、午後に通るのはBの猫」などと、同じ場所を時間帯で分けている“タイムシェア”があるともいわれています。もし、普段は午後にしか通らないBの猫が午前中にその場所に来たとしても、午前中はAの猫に“優先権”があるため、Bの猫は通れない、というのです。

 

それでもバッタリ、出会ってしまったときは?

集まるノラ猫たち

●気づいていないフリ

それだけ気を付けていても、バッタリ出会ってしまうときはあるようです。そのときの猫の対応がなんともシャイというか、何というか……。

「ほかの猫がいる」ことに気づいた猫は、「おっす。元気?」なんて馴れ馴れしく挨拶したりしません。そんなことをしようものならケンカになります。
このときのルールは「気づいていないフリ」。目を合わせず、「私はあなたのことなんか気づいていませんよ」というふうにそっぽを向いて立ち止まります。内心は「やっべ、出会っちゃった。どうしようかな~」という感じです。目の端ではつねに相手の動きを見ています。
やがて、どちらか一方が行きたい方向へゆっくりと進むと、それを見届けてからもう一方の猫も歩み去ります。または、両者とも元来た道へ引き返すこともあります。

ここまでして出会いを避ける心理は、社会的動物である私たち人間には理解しがたいものがありますね。猫にとって他の猫は獲物を捕りあうライバルでもあるため、このような特殊な付き合い方をしているのでしょう。

 

夜の集会でなわばりの共有仲間をチェック

2008.1月 162

●夜の「集会」の意味

野良猫が夜、神社の境内や公園で集まっていることがあります。何をするでもなく、ある一定の距離を置いて、ただじーっとしているだけ。時々いさかいが起きたり、仲良しの猫どうしが体をこすりつけたりしていることもありますが、基本的には何もせず「じーっ」。いったいなぜこのような「集会」をしているのでしょうか?

真偽のほどは猫に聞いてみないとわかりませんが、一説にはこれは、なわばりの共有部分を持つ猫たちが、「顔見せ」のために集まっているといわれます。「コイツがあのニオイの奴か……。強そうな猫だな」なんて思っているのかもしれません。
おもしろいのは、繁殖期が近づくにつれ集会の時間が長くなっていくこと。魅力的な異性を見つけるのは重要な課題ですから、「今度のお相手はどのオス猫にしようかしら?」なんて見定めているのかもしれませんね。

普段は出会うのを極力避け、時々夜に集まって顔見せをする。そんな、少し距離を置いた付き合い方が猫らしさなのでしょう。

 

 

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日本動物科学研究所

富田 園子

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