外の世界で優雅に生きている猫たち。屋根の上でひなたぼっこをしたり、塀の上で眠ったり、公園で会合をひらいたり・・・。そんな猫たちを見ていると、可愛くてほっこりしてしまいますが、野良の世界というのは非常に過酷。のんびりしているように見えても、実は熾烈な生存競争を勝ち残っているツワモノたちばかりなのです。ここではそんな野生の猫たちの世界について、ご紹介しましょう。 

全ての生き物に共通する自然のルール 

ある1つの種が栄えていくためには、しっかり子孫を残せるかどうかが非常に重要です。繁殖力が弱い種は、自然と淘汰されていきます。

ちなみに、とても強い繁殖力を誇る種でも、その種だけが増え続けることはありません。自然界には必ず天敵の存在があるからです。大量に子孫を残したとしても、その種を餌とする天敵の存在も必然的に増えます。また、1つの種が増えすぎてしまうと、その種が生きていく上で必要な物(植物であれば光や土壌の栄養素、動物であれば食べ物)が不足しまうので、一定数以上増えることは不可能なのです。このように、自然界を生き抜いている生き物たちは高い繁殖力を持って、バランスよく暮らしています。 

猫の出産事情 

ほぼ100%の確率で妊娠 

メスの猫は生後5ヵ月ごろから1歳までの間に発情期を迎え、子どもを産めるようになります。年に3~4回発情期を迎え、交尾をすると妊娠する確率はほぼ100%と言われています。そして約2ヶ月の妊娠期間ののち、2~6匹の子猫を出産します。 

猫の出産事情を見てみると、人間と比べて非常に強い繁殖力を持っていることがわかりますよね。この生まれてきた猫たちすべてが順調に成長しているとなると、世の中はとっくに猫だらけになっているはずです。そうなっていないのは、やはりそれだけ自然の環境は過酷だということ。野良の猫たちが生活する世界とは、一体どのような環境なのでしょうか? 

生き残っている猫たちが乗り越えた熾烈な世界 

兄弟間の争い 

母猫は一回の出産で子猫を2~6匹産みますが、実はこの兄弟猫たちの間でも、生存競争は繰り広げられています。 

子猫は母猫のミルクから必要な栄養を摂取しますが、母猫の乳首は場所によってミルクが出る量にバラつきがあります。たくさんミルクが出る乳首もあれば、あまりミルクが出てこない乳首もあるのです。兄弟の中でも体が弱い子は、ミルクがたくさん出る乳首にたどり着くことができません。 

 

さらに母猫は、子育てに対してあまり積極的ではありません。子猫にミルクを与えるために体を横たえることはしますが、弱っている子を引き寄せて、自らお乳を与えることはないのです。生まれつき体の弱い子猫は、兄弟間での生存競争に負けて、十分な栄養を摂取できないまま死んでしまうのです。 

冬の寒さ 

猫はもともと砂漠で生きてきたため、暑さには強いのですが、寒さにはとても弱い生き物。特に子猫は、冬の寒さに耐えられずに凍死してしまうこともあります。なにより、冬は餌となるネズミが極端に少なくなってしまうので、自然界で冬を越すということは非常に難しいことなのです。子猫が無事成長できるように、母猫は春や秋あたりに出産することが多いと言われています。暖かくて獲物が多いうちに出産して、子どもたちがある程度育ってから冬を迎えられるようにするためです。 

猫同士のケンカ 

猫同士は色々な理由でケンカをします。自然界におけるケンカは、ケンカと呼べるような生易しいものではなく、生き残りをかけた熾烈な争いです。生きていくための食料を確保するためのナワバリ争いや、子孫を残すために雌をめぐった争いは、確実に相手を追い出すためのもの。生き残りがかかっているので、相手が傷ついて逃げていくまで、全力で相手に向かっていきます。 

最強の猫たちがつないでいく、強い猫たちの系譜 

野生の世界で交尾を許されるのは、兄弟争いから生き残り、冬の寒さを乗り越え、なわばり争いに打ち勝った、たくましい猫たちばかり。強いメス猫が最強のオス猫と交尾をするのは、過酷な環境下でも生きていける、強いDNAを持った子どもを産むためなのでしょうね。 連綿と続く猫たちの生存争いは、より強い猫を育てているのです。 

野生の生き物たちの子育て 

過酷な環境で生きている動物たちは、独自の理論を持って子育てをしています。人間のように、1人の子どもを大切に育てて成長を見守る場合もあれば、大量に産み落として一切子育てをしない場合もあります。子孫を残すために種ごとに色々な工夫をしているのです。 

魚の場合 

出産数:数百匹~数万匹 

ほとんどの魚は一切子育てをしません。中には離れたところから子どもの成長を見守る魚や、体に抱きかかえて子育てをする魚もいますが、それはごく一部の話。子育てをしない魚は大量に卵を産むことで子孫を残そうとします。捕食されることが多いイワシなどの魚は、1回の産卵で万単位の卵を産み落とすと言われています。  

猫の場合 

出産数:2~6匹 

子猫が授乳しやすいように体を横たわらせたり、毛づくろいをしてあげたりはするものの、弱っている子猫を積極的に介抱することはあまりありません。また子猫がある程度大きくなると、激しく威嚇してナワバリから追い出します。突然威嚇された子猫は戸惑い、母親に必死にすり寄ろうとするのですが、母親は絶対にそれを許しません。やがて子猫が諦めてナワバリから出ていくまで、母猫の威嚇は続きます。これは、食料の数が限られたナワバリの中で共倒れを防ぐためのもの。一見クールなこの行動は、生き残るために必要な、本能的な行動なのです。 

ゾウの場合 

出産数:一頭 

ゾウは群れで生活をする生き物です。子どものゾウは、母と一緒にメスだけでできた群れに属して行動します。子ゾウは体が小さいため、肉食動物たちから狙われることが多いのですが、それを母親だけでなく、群れの大人ゾウたちが全員で守ります。また、群れの先輩たちが母ゾウを支えながら子育てをしていきます。生まれてきた一頭を、大人ゾウたちが一生懸命育てることで、子孫を残していくのです。 

 

 

野良で生きる猫たちの力強さ、おわかり頂けたでしょうか?普段かわいいな、なんて思って見ているノラ猫たちは、実は百戦錬磨のツワモノばかり。猫たちの世界を理解した後では、お外でゴロゴロと日向ぼっこをしている猫ちゃんたちを見かけたときに、また違った見え方がしてくるかもしれませんね。

東京猫医療センター 院長

服部 幸

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