猫はとてもデリケートな動物で、環境の変化や痛みに敏感です。

そんな猫たちにとって、動物病院での治療や手術は、ときに大きなストレスとなることがあります。
近年、人の医療と同じように、動物医療の現場でも「低侵襲治療(ていしんしゅうちりょう)」が注目されています。

これは、体へのダメージを最小限にして回復を早めることを目的とした治療方法です。

 

猫にとっての低侵襲治療とは

「低侵襲」という言葉には、単に“手術の傷を小さくする”という意味だけではなく、「体」「心」「回復期間」すべての負担を減らすという考え方が含まれています。

 

たとえば、次のような方法が猫の低侵襲治療として行われています。

 

  腹腔鏡手術

小さな穴からカメラと器具を入れて行う手術。避妊手術などで導入が進んでいます。

 

  内視鏡での異物除去

誤って飲み込んだものを、開腹せずに取り出すことができます。

 

  カテーテルを使った尿管治療

尿路の閉塞を開腹せずに治す技術(SUBシステムなど)。

 

  レーザー治療・超音波手術装置

出血を少なくし、痛みを和らげながら治療できる方法。

 

これらの技術によって、手術の痛みや入院期間を短縮できるケースがあります。

 

 

負担を少なくするための工夫

低侵襲治療は「手術方法」だけではなく、診察・検査・麻酔・回復までを含めた総合的な工夫が大切です。獣医師が心がけているポイントをいくつかご紹介します。

 

   麻酔の安全性向上

麻酔をかける前の麻酔前検査をしっかりと行い、血液・心臓・呼吸の状態などを確認して麻酔リスクを事前に把握したり、体への負担が極力少ない麻酔薬や方法を選択します。

 

   痛みの管理(ペインコントロール)

手術中・手術後の痛みを最小限にするための薬剤を使用したり、局所麻酔薬を用いて痛みが発生する部位の神経やその周囲に直接麻酔をかける「神経ブロック」を併用したりします。

 

   短時間の入院と静かな環境

猫は音やにおいに敏感です。落ち着ける環境を整えることでストレスを軽減します。

 

   飼い主さんとの丁寧な情報共有

ご家族の方に治療法を理解していただくことで不安を減らし、安心して見守ってもらうことも「猫のストレス軽減」につながります。

 

 

低侵襲技術の例

動物医療では、以下のような低侵襲技術が導入されています。

 

  腹腔鏡による避妊手術

従来の開腹手術より傷が小さくなることが期待され、回復が早い場合が多いとされています。

 

  尿管ステント/SUBシステム

尿路の閉塞を解消する比較的低侵襲な技術です。

 

  CT・MRI画像による正確な診断

小さな病変を早期に発見することで、手術の必要性を最小限したり、手術に臨む前により多くの情報 を把握することで、手術時間の短縮や成績の向上につながります。

  動脈塞栓術(カテーテル治療)

特定の血管や腫瘍に対し、ピンポイントで治療が可能です。

 

 

現在、これらの技術はすべての動物病院で実施できるほど標準的に行われているわけではありませ ん。まずは愛猫にとってどのような治療法があり、どこでより最適な治療法が受けられるのか、などをかかりつけの獣医師とよく相談しましょう。

 

 

 

低侵襲治療は、愛犬の体や心への負担を減らすだけでなく、飼い主さんの安心にもつながる治療です。ただし、すべての猫や病気に適用できるわけではなく、症状や設備、リスクを総合的に判断する必要があります。治療の選択で迷ったときは、かかりつけの獣医師に、侵襲性の少ない治療法について相談してみてください。

 

 

 

 

 

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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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