猫は嘔吐をしやすい動物です。健康上の問題がなくても、毛づくろいにより飲み込んだ毛玉を吐いたりすることは日常的にみられます。愛猫が嘔吐をした場合、嘔吐を何回も繰り返さず、吐いた後も元気や食欲があるようであれば、少し様子をみてもよいでしょう。

 

反対に、嘔吐を繰り返していたり、吐いた後に元気や食欲がなかったり、嘔吐の他にも下痢や腹痛など何らかの症状がみられる場合には、動物病院を受診しましょう。

 

その際、嘔吐物の「色」や猫の「様子」を確認することは、嘔吐の原因を調べたり病気を診断する上で重要な手がかりとなります。

 

 

嘔吐物の「色」や「中身」をチェック!

愛猫が嘔吐をしたら、その「色」や「中身」を必ず確認しましょう。

動物病院を受診する場合は嘔吐物を持参するか、写真などに記録をして情報を共有

することで、診断の手がかりとなります。

 

・毛玉を吐く

毛づくろいの際に舐めながら飲み込んでしまった毛玉が胃の中に溜まると、不快感をもよおし定期的に吐き出します。短毛種に比べると長毛種の方が毛玉を吐きやすい傾向にあります。 こまめなブラッシングで飲み込む抜け毛の量を減らしたり、毛玉を排出しやすいフードに変更することで、吐く頻度を減らすことができます。

 

・透明、白色の液体を吐く

猫が透明〜白色の泡のような液体を吐いた場合、「直前に飲んだ水」や「胃液」の可能性があります。ストレスなどによる胃のむかつきや、空腹による胃酸過多が原因となる場合が多いです。 嘔吐を繰り返さずに元気な様子であれば、少し様子をみてもよいですが、何度も繰り返し吐いてしまうと脱水を起こす可能性もあるので、繰り返す場合は早めに動物病院を受診しましょう。

・黄色の液体を吐く

猫が黄色の嘔吐物を吐いた場合、「胆汁」の可能性があります。胆汁は、鼻にツンとくるような刺激臭があり、主に長時間お腹が空いてしまったときに胆汁の嘔吐は起こります。 食事と食事の間に少量のおやつやごはんを与えるなど空腹時間を短くする工夫をしたり、腹持ちのよいフードに変更することで嘔吐を防げる可能性があります。ただし、肝臓病や腎臓病の初期症状でも黄色い液体や泡を吐くことがあるので、繰り返す場合は早めに動物病院を受診しましょう。

 

・フードと同じ色のものを吐く

猫がキャットフードと同じような色の液体や半固形物を吐いた場合、未消化のフードの可能性があります。嘔吐物の匂いを嗅いでみて、フードと同じ匂いがするか確認します。急ぎ食べや食べ過ぎで起こることがあり、食欲や元気に問題がなければ様子をみてもよいでしょう。ただし、繰り返しフードを吐いてしまう場合には、病気のサインの可能性があるので、注意が必要です。

 

 

・ピンク色や赤色のものを吐く

猫の嘔吐物にピンクや赤色の液体が見られたら、血液が混ざっている可能性があります。 異物の誤食による口や食道、胃などからの出血や、急性胃炎、胃潰瘍、腫瘍などの病気の可能性が考えられます。胃や腸から出血しているときには、酸化により茶色っぽく見える場合もあります。 もしも鼻からも同様のピンク色の液体や泡が出た場合には、心臓病などからくる肺水腫の可能性もあり、緊急性が高いです。猫がピンク色や赤色のものを吐いたときには、なるべくすみやかに動物病院を受診してください。

 

・嘔吐物に異物が混ざっている

猫の嘔吐物の中に、おもちゃの破片や布製品、ヒモ類など、フードやおやつ以外のものが混ざっている場合には、誤食の可能性が高いので要注意。何も出てこないのに吐く仕草を繰り返すケースもあります。すみやかに動物病院を受診してください。

 

・嘔吐物に虫が出た

嘔吐物の中に動くものを見つけたら、寄生虫の可能性があります。寄生虫は便にも混ざって出てくることが多いので、便の中身もよく確認してみてください。 嘔吐物に寄生虫を見つけたら、写真や動画などを撮影し、排便があれば便も持参して動物病院を受診しましょう。

 

 

嘔吐の「様子」をチェック!

以下のような症状が一つでもみられる場合には、命に関わる緊急性の高い病気の可能性もあるので、なるべく早く動物病院を受診しましょう。

 激しい嘔吐を繰り返す

 嘔吐物や便に血液が混じる

 嘔吐物に異物が混ざっている

 嘔吐物の中に虫が出た

 下痢もしている

 腹痛がある(お腹を触るのを嫌がる)

 元気や食欲がない

 吐きたそうにするが吐けない

 ヨダレがダラダラと出る

 中毒の可能性がある

 

 

猫が嘔吐をしたときの対処法

1 吐いた直後は水も食事も与えない

嘔吐の直後は、胃の中に水や食べ物が入ってくると反射的に再び吐いてしまう場合があります。そのため、嘔吐の後5〜6時間程度は水もフードも与えずに、ゆっくり胃を休ませてあげましょう。

 

2 嘔吐がおさまった場合には、少しずつ水や食事を与えましょう

嘔吐がおさまった場合、まずは少量の水を与えます。吐かないようであれば、水の量を少しずつ増やし、問題がなければ少量のフードを与えてみましょう。フードは消化しやすいよう、水分を加えて少しふやかしたものにしてみるのもよいです。嘔吐が再発しなければ少しずつフードを増やし、徐々にいつもどおりの食事に戻していきましょう。

 

3 嘔吐を繰り返す場合は動物病院へ

絶食・絶水をしても嘔吐がおさまらない場合や、水や食事を与えると嘔吐が再発してしまう場合には、なるべく早めに動物病院を受診しましょう。 その際、嘔吐物を持参したり、嘔吐物の写真を撮っていくことは診断の重要な手がかりとなります。

また診察では、

 嘔吐がいつから始まったのか

 何回程度吐いているのか

 嘔吐のタイミング(食前・食後・食間など)』

 食事やおやつの内容

 便の様子

などを確認される場合があるので、記録しておくとよいでしょう。

 

猫の嘔吐の原因はさまざまです。空腹や毛玉などが原因の場合もありますが、中には命に関わる緊急性の高い病気のサインの可能性もあります。

 

猫が嘔吐をしたら、嘔吐物や猫の様子をよく観察し、嘔吐を繰り返したり、食欲や元気がないなど嘔吐以外の症状がみられる場合には、すみやかに動物病院を受診しましょう。

 

 

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福永めぐみ先生

福永 めぐみ

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