
動物病院を受診するとき、「うまく症状を伝えられるかな」「何を持って行けばいいのかな」と不安に思う飼い主さんもいらっしゃるかと思います。
実は、受診する前に少しの準備をしていただいたり、伝え方を工夫していただくことで、診察の正確さやスムーズさが大きく変わることがあります。
また、猫は性格上、通院そのものがストレスになることがあります。キャリーに入るのを嫌がったり、病院で緊張して動けなくなったりと、見ていて不安に感じることもあるでしょう。
しかし、病気の早期発見や予防のためには、定期的な診察がとても大切です。
ここでは、猫の飼い主さんが知っておくと安心な「動物病院のスムーズなかかり方」を、獣医師の立場からお伝えします。
獣医師がとくに聞きたいこと・症状の伝え方
猫は体調不良を隠す傾向があるため、飼い主さんの観察力が診断のカギになります。
診察の際は、次のような情報をできるだけ具体的に伝えてください。
いつから・どんな様子か(例:「2日前から食欲が半分に」「今朝吐いた」)
食欲・水を飲む量・排泄の変化
元気・動き方の変化(寝てばかり、ジャンプしなくなったなど)
排尿・排便の様子(トイレに行く回数や色、においの変化)
食事内容や環境の変化(フード変更・引っ越し・新しい猫など)
※ 写真や動画を撮っておくのもおすすめです。
たとえば、「咳」や「歩き方の異常」は病院では症状が出ないことも多いため、動画で見せてもらえると診断の大きな助けになります。

初診の場合のポイント
初めての動物病院では、猫も飼い主さんも緊張しがちです。
スムーズに診察を受けるために、次のような準備をしておきましょう。
愛猫の生育歴(いつから飼育しているのか、どこで(ブリーダー・ペットショップ・保護など)生まれ育ったのか、など)
ワクチンや健診の記録、過去の検査結果
現在使っているフードやサプリメントの情報(パッケージ写真でもOK)
現在飲んでいる薬の情報(実物・薬袋・メモなど)
猫の性格や苦手なことの情報(抱っこが苦手・音に敏感など)
保険証(加入している場合)
キャリーは普段から慣らしておき、
猫が安心できる場所にしておく
のがおすすめです。
通院前にお気に入りのタオルやブランケットを入れてあげたり、洗濯ネットなどに包むと、
少し落ち着く猫も多いです。

持病がある猫の場合の注意点
腎臓病、心臓病、甲状腺機能亢進症など、慢性疾患を持つ猫では、継続的な治療と情報共有がとても大切です。
新しい病院にかかるときには、
これまでの治療経過がわかるものをできるだけ持参
してください。
過去の血液検査・尿検査・画像検査の結果
服用中の薬やサプリのリスト
症状の経過メモ(体重、食欲、水を飲む量など)
病院が変わる場合は、
「紹介状」や「検査データのコピー」をお願いしておく
と、診療がスムーズになります。

獣医師側のちょっとしたお悩み
飼い主さんに知っておいていただけると獣医師側として助かる点をいくつかご紹介します。
•「なんとなくいつもと違う」「なんとなく元気がない」が主訴の場合
→ もう少し具体的な情報があると助かります。突然ニャーと鳴いた後から調子が悪い、トイレに行くが尿が出ない、少し動くと疲れやすい、ここを触ると痛そう、などの具体例が、診察へのヒントとなることがあります。些細なことでも相談してみましょう。
• 飼い主さんがネットの情報だけで自己判断してしまう
→ ネット情報などは参考にしつつ、診察で獣医師に確認をしましょう。
• 薬を途中でやめる・違うペットに使う
→ 思わぬ副作用や再発の原因になることがありますので注意しましょう。
獣医師も病気やケガを治したいという気持ちは飼い主さんと一緒です。
不安に感じたりわからないことは動物病院で相談してみてください。

よくある質問(Q&A)
Q1:ちょっとした変化でも病院に行った方がいいですか?
A:はい。猫は症状が出る頃には病気が進行していることもあります。少しの変化でも早めの受診をおすすめします。
Q2:通院がとてもストレスになるので迷っています。
A:最近は「キャットフレンドリー」な静かな診察室や、往診対応の病院もあります。相談してみましょう。
Q3:多頭飼いで、1匹が体調を崩しました。他の子も連れていくべき?
A:感染症の可能性がある場合は、他の猫の状態も伝えてください。必要に応じて検査を行います。
Q4:薬を嫌がるので途中でやめてしまいました。
A:自己中止は再発や悪化につながることがあります。飲ませ方の工夫や代替方法を一緒に考えましょう。
Q5:急に具合が悪くなったときは?
A:まずはかかりつけの動物病院に連絡し、指示を仰ぎましょう。普段から、夜間や休診日などの場合に受診できる病院や、自宅から最も近い救急病院などを把握しておくことも重要です
猫にとって動物病院は「知らない場所」ですが、飼い主さんの少しの準備と伝え方で、診察の正確さと猫の安心感が大きく変わります。
猫と獣医師、そして飼い主さんがチームとなって、「なるべくストレスの少ない医療」を一緒に作っていくことが大切です。
気になることがあれば、遠慮せず「こんなことで相談していいのかな?」と聞いてみてください。
その一言が、愛猫の健康を守る第一歩になります。
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福永 めぐみ
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