すい炎という病気、聞いたことのある方も多いと思います。その名の通りすい臓が炎症を起こしている状態です。

実は他の病気を併発することも多い恐ろしい病気です。併発する前に発見されれば予後は良いとされているので少しの変化も見逃さないようにしましょう。

すい臓の役割

すい臓には大きくわけて2つの役割があります。 

消化酵素を分泌する役割(外分泌)

すい臓は食べ物を消化吸収するために必要な酵素を十二指腸に分泌する機能を持っています。脂肪やタンパク質を分解する酵素(リパーゼやアミラーゼ)がすい臓から出されることで食べ物が分解され栄養素を吸収することができます。

ホルモンを分泌する役割(内分泌)

すい臓は血糖値をコントロールするホルモンであるインスリンやグルカゴンを分泌します。そのうちインスリンは血糖値を下げられる唯一のホルモンとして知られています。このインスリンが上手く分泌できなくなったりうまく作用しなくなったりした状態が糖尿病です。

すい炎とは

初めにも述べたとおりすい炎はすい臓が炎症を起こした状態のことを言います。急性すい炎と慢性すい炎があり、それぞれメカニズムは異なります。しかし、このメカニズムはまだ完全に解明されていないのが現状です。

急性すい炎

先にも述べましたがすい臓は消化酵素を分泌している臓器です。

すい臓から分泌された消化酵素は十二指腸で作られる酵素と交わることによって消化酵素しての働きを始め(活性化)、タンパク質などを分解することができます。

本来、この消化酵素はすい臓の中では活性化されないようにできています。しかし何らかの原因ですい臓の中で消化酵素が活性化してしまい、すい臓自体を消化してしまうことで炎症を起こしてしまうのです。

慢性すい炎

すい臓に長期間持続的に炎症が起こってしまうと線維が入り込み、すい臓が固くなり機能しなくなってしまいます。この状態が慢性すい炎です。

犬では急性すい炎が多く、猫では慢性すい炎の方が多いとされています。

原因は?

残念ながらまだはっきりと原因は解明されていませんが以下のものが要因なのではないかと考えられています。

 

□ 油分が多い偏った食事
□ 高脂血症
□ 高カルシウム血症
□ 利尿薬や一部の抗がん剤などの薬物の副作用
□ ウイルスや寄生虫の感染
□ 血管系の異常
□ 腹部の打撲や外科手術によるすい臓の損傷
□ 十二指腸炎や胆管炎などに併発する場合

すい炎になるとどうなるの?

 食欲不振
 嘔吐
 発熱
 腹部の痛み
 下痢

 

以上のような症状が起こります。

 

ほかの病気を併発することも多く十二指腸炎と、胆管炎などがよく見られます。

 

また、すい炎が長期間にわたるとインスリンを分泌している細胞(β細胞)の機能が落ちてしまったり、破壊されてしまったりして糖尿病になってしまうこともあります。

そしてさらに進行するとすい臓で消化酵素を作ることができなくなってしまうため外分泌不全という病気になってしまいます。この病気は慢性的な下痢と体重減少、白色でとても臭い便をすることが特徴です。

診断の付け方

すい炎を診断することは簡単ではありません。診断するにはまず、すい炎に伴う典型的な臨床症状がでていることを確認します。

血液検査

白血球の数が多くなることがあります。また合併症の有無にもよりますが血糖値の上昇、肝臓や胆道系の数値が上昇することが多いです。

また、すい臓で産生されるPLI(すい特異リパーゼ)がすい炎になると上昇することが発見されました。この数値の測定により、すい炎の診断は前より簡単になりましたがこの数値は初期には上昇するものの慢性経過を辿っている場合には上昇しないことがあります。そのため、必ずすい炎を捉えられるわけではありません。

レントゲン検査

すい炎を起こしているときにすい臓の変性や他の臓器の異常が検出できることがありますがその変化が必ず起こるわけではありません。

超音波検査機器

すい臓の異常を捉えることができます。また胆管の拡張を見つけることもできますので、レントゲンよりは有用性が高いとされています。

ただし超音波検査は機器の性能や術者の技術が重要になるためすべての動物病院で診断可能というわけではありません

治療法

残念ながらすい炎に対しては特効薬がありません。
基本的には起きている症状に対して対症療法を行います。嘔吐が激しい場合は制吐薬の投与し下痢をしていたら下痢止めを、腹部の痛みが強いようであれば鎮痛剤を投与します。

 

猫のすい炎の場合ステロイドが効果的な場合があるため、状況によっては投与することもあります。

またすい臓組織への腸内細菌の二次感染を防ぐために抗菌薬を投与することもあります。感染症や糖尿病などそのほかの病気も併発をしていればそれぞれに対しての治療も同時並行して行う必要があります。

 

そして大切なのは嘔吐および下痢で失った水分を補うために血管や皮下に水分などを投与する輸液療法です。

輸液はすい臓および全身の循環の改善と維持のためにも有効です。猫では特に栄養摂取量の低下が全身状態を悪化させる恐れがあるので、自分の口から食べることが難しい場合は鼻や食道、胃にチューブを通したチューブフィーディングといった処置をおこない栄養補給を行うこともあります。

気をつけること

すい炎の他に重度な合併症や臓器不全がなければ予後は良いとされています。

糖尿病や肝臓、胆嚢への病気も併発した場合は継続してそれぞれのケアを行なっていく必要が出てきます。

 

食事はすい臓に負担をかけないように、脂肪分が多すぎないフードにしていくとよいでしょう。
他の病気も併発している場合もあるので食事内容は獣医さんに相談してから決めることをおすすめします。 

 

猫のすい炎は回復後も再発することがあります。治ったとおもっていたら1年後に再発してしまうこともよくあります。すい炎の再発を防ぐことは難しいので猫の細かな体調の変化を見逃さないようにしましょう。また、健康診断もしっかりと受診することで早期発見につながります。

東京猫医療センター 院長

服部 幸

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