大きくてまんまる、とってもきれいな猫の目。猫の大きな魅力のひとつですが、白内障にかかるとその素敵な目が、白く濁ってしまいます。今回は、猫の白内障について解説します。

白内障は、眼球内にある水晶体と呼ばれる器官が、何らかの原因で白く濁ってしまう病気です。水晶体は正常な状態では透明で、カメラのレンズと同じ役目をしていますが、白内障にかかり白濁してしまうと、視力が落ちたり視界が白く濁ってしまいます。

症状

白内障が進行するにつれ、瞳孔の奥が白く変色していき、視覚障害が現れます。

片目だけに発症した場合には、視覚はもう片方の目で補えるため日常生活で不自由しないため発見がおくれます。

両目の場合は視界がぼやけてきます。柱や壁、物にたびたびぶつかる、段差につまずくなどの行動異常が起こります。また、階段の昇り降りや暗いところで動くことを嫌う、小さな物音に驚いたり、怯えやすくなるなどの変化が生じることもあります。

ただし、猫は非常に聴力が良い動物なのでほとんど視力が無くなっても、自宅であればものにぶつからずに歩くことができます。それゆえに、発見が遅れてしまうことがあるのです。

知らない場所でものにぶつかってしまうことが1つのポイントです。

原因

人や犬に比べると、猫の白内障は発症することはごくまれです。遺伝性のものはほとんどなく、大部分が何らかの外傷や眼内の炎症などにより後天的に発症します。

後天性白内障の原因には、猫同士のケンカや交通事故、トゲなどの異物による外傷、緑内障やブドウ膜炎(眼内炎)、網膜変性症などの眼疾患、除草剤などに含まれるジニトロフェノールや衣類の防虫剤に含まれるナフタリンなど毒物の摂取、子猫時代の栄養不良などが挙られます。人間に多い老齢性のものや、犬には比較的多く見られる糖尿病から発生する白内障も、猫ではごく少数です。

先天性(遺伝性)のものはペルシャヒマラヤンバーマンなどで確認されていますが、数は多くはありません。

じゃれあう猫

治療方法

初期段階では、進行を遅らせたり症状を軽減するための点眼薬や内服薬を処方する内科的治療が中心となります。ただし内科的治療では完治させることはできないため、症状が重度の場合には外科的治療法が必要となります。

外科的治療法では、白濁した水晶体を取り除く手術を行います。一般的には、角膜を切開し水晶体を摘出する外科手術か、超音波で水晶体の内容物を細かく砕いて吸引する「水晶体乳化吸引術」が行われます。水晶体があった場所には、眼内に人工レンズを装着する場合もあります。

目薬のさし方

□猫の顔を上に向けます。

□怖がらないように、猫の頭の後ろ側から素早く点眼します。

□目のまわりをやさしくマッサージし、点眼薬を馴染ませます。

□あふれ出た点眼薬や目やにをふき取ります。

※ポイントは、なるべく素早く行うこと。

 

猫が暴れる場合は、バスタオル等を使って全身を包み込み、二人がかりで行います。目薬のさし方動画はこちら

予防方法

猫の白内障は大部分が、外傷性のものや他の眼疾患が原因です。 予防のためには、ケンカや事故を防止するために室内飼育をすることが基本となります。多頭飼いの場合は、相性の良い猫を選ぶなどの配慮が望まれます。また、将来に向けて不幸な猫を増やさないという観点から、先天性の白内障を患った猫を繁殖させないことも推奨されます。

白内障は、正面から見た目の色が白っぽく変色していることがその判断基準となります。しかし、一般的に飼い主さんは、水晶体の半分以上が白濁した段階で初めて気づくケースが多いようです。行動範囲が狭くなったり、物にぶつかったり壁沿いを歩いたりするなど、猫の行動に少しでも異変を感じたら、まず目を見て水晶体が濁っていないか確認しましょう。

白内障は早期であれば、薬によって進行を遅らせたり症状を軽減することができる病気です。猫の目の色や普段の様子をこまめにチェックし、異常が見られる場合は早めに獣医師に相談しましょう。

 

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東京猫医療センター 院長

服部 幸

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