猫の喘息は2~3歳のような若いうちから発症することもあれば、4~8歳程度の中齢からいきなり発症することもあります。喘息を引き起こす原因は猫によってさまざまで、まずその原因を突き止めることが適切な治療の一歩となります。
ここでは、症状や診断方法、治療法などを解説します。

喘息とは

気管支の炎症によって気道が狭くなり、咳やゼーゼーという呼吸、呼吸困難などの呼吸器症状が起こる病気です。
喘息は完治することは難しく長期的な治療が必要ですが、適切な治療によって症状を抑えることができます。

 

しかし適切な治療が行われずに重症化すると、気管支が狭くなったまま正常に戻らなくなってしまったり肺が膨らみすぎてしぼめなくなってしまい呼吸がうまくできなくなります。最悪の場合、肺気腫のような治療不可能な病気になってしまうこともあるので注意が必要です。

 

喘息の症状は?

喘息発作は突然始まります。咳やゼーゼーという呼吸、酸素が十分供給されないことによって口の中の粘膜が青紫色になったりするチアノーゼが最も顕著な症状です。このような症状がみられる一方で、体温は正常であることが多いです。

 

喘息は重度になると咳発作が長期間にわたることもあります。咳をする時は、前傾〜伏せた姿勢になり首を伸ばして口を開け軽く舌を出している様子がよく見られます。咳をした後は口の中に出てきた痰を飲み込む、舌なめずりの動作が見られこの動作が繰り返されます。

 

また喘息を患っている猫の中には咳があまり出ず、呼吸数が極端に増加することもあります。猫の安静時の呼吸数は20〜40回/分くらいですが喘息の症状では60-80回/分くらいになります。

 

喘息の診断方法

病歴と症状で判断

猫の喘息は、呼吸器感染症とは違い比較的経過が長いことが多いです。多くの場合1ヶ月以上咳や呼吸器症状が続いています。

 

ただし、喘息を持っている猫のなかには上気道感染症(ウィルス性鼻気管炎カリシウィルス感染症)を併発しているケースがあります。
上気道感染症は風邪のような症状を引きおこす感染症なので鼻水くしゃみという症状が出ていることもあります。

レントゲン検査

喘息を発症している猫のレントゲンでは普段は観察しにくい気管支が明瞭に見えるという特徴があります。

ただし、軽度の喘息や、病気の初期はこの様な変化が観察されないこともあります。レントゲンを撮ることで腫瘍肺炎や胸膜炎、横隔膜ヘルニア、心疾患など他の病気との鑑別を行うこともできます。

血液検査

喘息になると血液中の好酸球というアレルギーに関連する免疫細胞が増加します。喘息の診断では血液検査を行いこの好酸球の数を測定します。
ただし、レントゲン検査と同じ様に軽度であったり病気の初期の場合ではこの変化が起こっていないこともあります

診断的治療

診断的治療とは、その病気の治療をしてみて反応があれば診断するという方法です。喘息が疑わしい猫に対して治療法のひとつであるコルチコステロイドを投与し改善すれば喘息の可能性が高くなります。

 

また喘息の特徴としてこのコルチコステロイドを休薬すると症状が再燃します。この様な反応を見ることで喘息の診断を行うこともあります。

気管支鏡検査および気管支肺胞洗浄液検査(BALF)

気道内の様子を観察することできる気管支内視鏡検査では、気道内の異物や気道の腫瘍の確認できます。

 

気管支肺胞洗浄液検査とは、気管支やその先の肺胞に滅菌生理食塩水を注入しそれを回収して行う検査です。
採取した液の中の細胞の種類を特定したり、細菌がいないかどうかを検査したりします。診断をするにあたって大きな情報となりますが、全身麻酔が必要なためメリットとリスクを考えながら行う必要があります。

寄生虫検査

猫に咳を起こす代表的な寄生虫としてフィラリア(犬糸状虫)があります。猫の場合、フィラリアの感染を確認することは難しく超音波検査と血液検査を組みあわせて行う必要性があります。

 

また日本では珍しい症例ですが、肺に寄生する寄生虫が呼吸器症状を起こすこともあります。それを除外するために糞便検査を行うこともあります。

 

喘息の治療方法は?

基本的な治療は3つあります。

アレルゲンの排除

アレルゲンを特定することは難しいですが、猫の詳細な病歴や生活環境などからアレルゲンを推測したり、可能性が高いものを猫の周りから排除するという心がけが必要です。

 

 ホコリ

 香水

 タバコ

 揮発性の化学物質

 

以上のようなものがよく見られるアレルゲン物質です。

 

特定するためには咳が出るタイミングを詳細に観察することが有効です。例えば、飼い主さんがタバコを吸い始めると咳が出るとか、香水を使うと呼吸が苦しくなるなどがあれば、それがアレルゲンである可能性が高いでしょう。

 

アレルゲンとなり得るものは出来るだけ猫の生活圏から排除することが重要です。こまめな掃除やエアコンフィルターの清掃、細かい粉塵が起こりにくい猫砂への変更などアレルゲンを排除した環境を整えることなどが再発防止及び病態悪化を防ぐことができます。

 

気管支拡張療法と抗炎症療法

薬剤を使用した治療法としては気管支拡張薬と抗炎症薬があります。抗炎症薬としてはステロイドや免疫抑制剤が使われることが多いです。これらの薬は飲み薬で使用される場合と、吸入薬(インヘラー)があります。これらの薬は、最初は高用量で開始し症状が落ち着くにつれて減量してゆくことが一般的です。

 

激しい咳発作や呼吸困難などを起こしてしまった場合には空気中よりも酸素濃度濃い特別な酸素室(ICU)に入ってもらう必要があります。

 

 

喘息は重度にならないうちに適切な治療をすることで症状を緩和し良好な状態を維持することができる病気です。
しかし、完治することは少ないため治療は長期にわたる可能性が高いことは覚えておいてください。様子を細かく観察してそれぞれの猫に合った治療法を行いましょう。

 

 

 

 

 

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東京猫医療センター 院長

服部 幸

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