みなさんは、かのアメリカの文豪、アーネスト・ヘミングウェイ(1899〜1961)が愛した猫、「ヘミングウェイ・キャット(Hemingway Cats)」をご存知でしょうか?
ヘミングウェイは1954年にノーベル文学賞を受賞。アメリカ屈指の文豪として知られていますが、作家のほかに、詩人、ジャーナリスト、冒険家などさまざまな顔を持っていました。私生活においては海、酒、女性、釣りなどを愛し、また大の愛猫家としても有名です。
前指が6本、幸運をもたらす猫
1930年代、ヘミングウェイがアメリカ本土最南端の島、フロリダ州のキーウエストにて執筆活動を行った際に、友人の船長から「スノーボール」という名の猫を譲り受けました。この猫は、前肢の指が6本ずつある、多指症の猫でした。器用でねずみ取りが得意なこの猫を彼はたいへんかわいがり、幸運をもたらす猫としてとても大事にしていたそうです。この猫が、「ヘミングウェイ・キャット」の由来となっています。
「”ミトン”のような大きな手(ミトン・ハンド)」を持った多指症の猫は、通常の猫よりも手先が器用だといわれています。海上の移動手段として帆船が主流だった時代には、船上でマストに渡したロープも軽々と登ることができ、また木造船の大敵であるねずみを捕ることにも長けていたため、「幸運の猫」として持てはやされたといいます。
ギネスブックには、合計28本の指を持つ猫も
多指症は、猫には比較的多く見られる奇形で、近親交配などがその原因となります。猫は通常、前肢計10本、後肢計8本、前後合わせて18本の指をもっていますが、猫の多指症でもっともポピュラーなのは、前肢の指だけが左右1本ずつ多い計20本というパターンで、「ヘミングウェイ・キャット」もこれに該当します。後肢の指が多いケースはより珍しいようです。
ギネス記録としては、前肢・後肢に7本づつ、合計28本の指を持つ猫が確認されているそうです。また、大型の猫種・ピクシーボブは唯一多指症が公認されている品種で、7本まで許容されています。猫の多指症は優性遺伝であり、どちらかの親猫が遺伝子を持っていると多指症の猫が生まれる可能性があります。ほとんど場合は日常生活に不都合はなく、特別な治療は必要としません。個体によっては爪が研ぎにくいことがあり、またそのままにしておくと巻き爪になり肉球に刺さってしまう恐れもあるため、その場合は定期的な爪切りが必要となります。
「ヘミングウェイ・キャット」の子孫は、今も元気に活躍中
さて、ヘミングウェイが愛した「スノーボール」はその後、多指症の遺伝子を持つ子猫たちを残しました。現在、博物館となっているキーウェストのヘミングウェイの家には、「スノーボール」の直系子孫が50匹前後住んでおり、そのうちの約半数が6本指の持ち主です。
交配を制限され、数の増減を管理されながらもみな元気に暮らしており、今も訪れるヘミングウェイ・ファンや猫好きの観光客を和ませています。 現代でも、多指症の猫が生まれた際には親しみを込め、「ヘミングウェイ・キャット」と呼ぶことがあります。
さてさて、この「ヘミングウェイ・キャット」。新たに猫ちゃんを迎え入れようとしているご家庭は、いちどおチビちゃんの足指を確認してみては? もしかするとその子は、大きな手をした”幸福を呼ぶ猫”かもしれませんよ。
ヘミングウェイ・キャットの動画は‘こちら’
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