まあるい大きな瞳。しなやかな肢体と豊富な毛色のヴァリエーション。優美で機敏な身のこなし。愛らしくもときにクールな、ツンデレなその性格と、猫の魅力は枚挙にいとまがありません。ぷにぷにとした感触、しっとりとした手触り、独特の匂いなどが特徴的な「肉球」もその一つでしょう。

「肉球」、その奥深い魅力にはまる愛猫家増加中

近年、猫の「肉球」の、その魅力の虜となる愛好家が増加しています。魅惑の「肉球」愛を語るブログは盛況で、肉球を模したおまんじゅうやマシュマロ、ケーキなどの菓子類、あるいは「肉球」デザインの手袋やチャーム、台所用品などなど、多くの「肉球グッズ」も販売されています。全国の「肉球」ファンにより、11月29日を「いい肉球の日」として祝う動きも浸透しつつあるようです。

最近では、「肉球」をテーマにした写真集や、果ては人間用の”猫の肉球の香り”がする「NIKUKYU NO KAORI ハンドクリーム」(フェリシモ猫部)も登場。こちらは、「香ばしいポップコーンの匂い」「焦がしキャラメルの匂い」「クレープの皮みたいな甘い感じの匂い」などなど、ユーザーからはさまざまな感想が寄せられているようです。じつはトイレをかき回した匂いなのかもしれませんが(笑)。

「肉球」にはどんな働きがあるのかな

「肉球(にくきゅう)」、正式には「蹠球(しょきゅう)」は、主に猫目(食肉目)の動物の足裏部に見られる、盛り上がった無毛の部分の名称です。獲物に接近する際に気付かれないように

足音を消す働き

があり、また、歩行時や樹上などから飛び降りる際の

衝撃を緩和する役目

もあります。猫の機敏かつ、しなやかな身のこなしの秘密の一端は「肉球」にありそうです。猫の

手根球のすぐ上にある2~3本の少し長い毛は、顔のヒゲと同様に歩行時に触覚器としての役割

をこなします。

「肉球」は、赤ちゃんの頃にはごく柔らかくふにゃふにゃですが、自ら歩行するようになると徐々に固くなり、弾力が備わってきます。ほかの皮膚同様、表面は角質層で覆われていますが、その層は非常に厚く、いちばん外側は人の爪のような固いケラチンで覆われています。

そしてその下は、脂肪を多く含んだ弾性繊維が網目状に重なっており、神経や血管はこの脂肪の中にあるため、裸足でも地面の熱さや冷たさをあまり感じないようです。また、

猫は体に汗腺を持たず、唯一「肉球」の部分と鼻鏡でのみ汗をかきます。

これには常に

「肉球」をしっとりとさせ、滑り止めとしての機能

があるといわれています。

「肉球」チェックで、病気の早期発見につながるかも?

「肉球」の色は体毛の色と関係があり、白っぽい猫は「肉球」の色も薄く、黒い毛並みの猫は「肉球」も黒、そして三毛猫やサビ猫のようなまだら模様の猫は、「肉球」の色もやはりまだらとなる傾向が見られます。毛色と同様にヴァリエーション豊かな「肉球」の、その色や形状で猫の性格を占う、手相ならぬ「肉球相」も話題となっています。書籍やアプリがあるので、我が家の愛猫の性格診断をしてみても楽しいですね。

また、「肉球」が”硬くなっている”、”白っぽくなっている”、”熱くなっている”、”冷たくなる”などの変化に気付くことで、病気の早期発見につながることもあります。

肉球からわかる病気については、まれにですが

“硬くなる”のは「がん」である可能性

があります。「がん」であった場合、硬くなるだけでなく、「しこり」になったり、盛り上がってきたりします。

“白っぽくなる”のが「貧血

“熱くなる”のが「発熱」

している症状とされています。逆に

“冷たくなる”のは「血栓」ができている可能性

が高いといわれています。

基本的に、猫の肉球の温度は一定ですが、

両方の「肉球」を触ってみて温度が明らかに違う場合、何かしら病気の症状が発生している可能性が高い

です。とくに

「肉球」が膨れ、まるで大福もちのようにぷにょぷにょとした感触だと、形質細胞性足皮膚炎の可能性

が考えられます。

過度な「肉球」愛にはご用心!!

ただし、猫の「肉球」にはたくさんの神経が通っており、個体によっては「肉球」に触られることで敏感に反応してしまうことがあります。「肉球」愛のあまり、いやがられるほどに「肉球」に触ることは控えましょう。あくまでも猫のご機嫌をうかがいつつの、適度な「肉球」スキンシップを心がけたいものです。

 

「うちの子」の長生きのために、気になるキーワードや、症状や病名で調べることができる、獣医師監修のペットのためのオンライン医療辞典「うちの子おうちの医療事典」をご利用ください。

 

 

 

にゃんペディア編集部からのメールマガジン配信中!

「にゃんペディア編集部」では、愛猫との暮らしに役立つお勧め記事や、アイペット損保からの最新情報を、にゃんペディア編集部からのメールマガジン(月1回第3木曜日夕方配信予定)でお知らせしています。ご希望の方はこちらからご登録ください。

 

東京猫医療センター 院長

服部 幸

詳細はこちら

関連記事

related article