見ているだけでも癒される猫の肉球ですが、その色や硬さ、匂いには個体差があります。
そしてかわいいだけでなく、さまざまな役割も担っており、肉球にトラブルが生じたときには早めに対処してあげることが重要です。
ここでは、肉球の役割や起こりやすいトラブル、おうちでできる肉球のケアについて解説します。
肉球にはどんな役割があるの?
猫の肉球はそのかわいい見た目もさることながら、実はさまざまな役割を担っています。
① 体温を調節する役割
猫は極端な体温調節が苦手な動物です。その理由は、人間は汗をかいて体温を調節することができますが、猫には汗をつくる器官である「エクリン腺」が非常に少ないことが挙げられます。そしてこのエクリン腺は唯一肉球には存在し、猫の体温調節を助ける役割を担っています。
② クッションやグリップの役割
肉球は猫の体重を支える4本の足先を保護する役割を担っています。
肉球の表面は、角質層という硬い組織で覆われており、他の皮膚に比べると肉球の角質層は分厚い構造になっています。また奥は弾力性のある組織と柔らかい脂肪組織から構成されています。これらの構造により、猫が高いところから着地をしたり走ったりする際に、足にかかる衝撃を吸収して関節や骨などへの負担を軽減させるクッションの役割を果たしています。
また、獲物をハンティングする際にも、肉球のおかげで足音を立てずに歩くことができたり、高いところや狭いところを歩くときなどにはグリップの役割も果たしていると言われています。
③ 地面の温度からからだを守る役割
肉球は表面に角質層という硬い組織があるため、多少温度が高い場所を歩いたり、雪の上などの寒い場所でも走ることができます。また反対に、熱いすぎる場所や危険な場所を認識して回避することにも役立ちます。
④ 物を認識する、つかむ役割
猫は前肢でちょんちょん触れることで、それがどのようなものなのかを探るセンサーの働きもしていると考えられています。また、何かを器用に掴んだり、物にしがみついたり、柱などを登ったりできるのも、肉球のおかげだとされています。
⑤ グルーミング
猫はきれい好きな動物なので、日常的にグルーミング(毛繕い)をします。舐めることができない顔周りや耳の後ろなどは、舐めて湿らせた肉球をブラシのように使うことで、全身をグルーミングすることができます。
肉球にはどんなトラブルが起こるの?
肉球を舐めるたり気にする仕草がみられるときには、グルーミングや暇つぶしなどの場合もありますが、肉球に何らかのトラブルが起きている可能性があります。
① 乾燥、ひび割れ
猫の肉球がカサカサになったりひび割れを起こしてしまう場合には、以下のような原因が考えられます。
季節の影響(冬の乾燥):空気が乾燥することで、肉球や皮膚も乾燥しやすくなります。
外歩きによる刺激:室内飼育の場合は考えられませんが、熱いコンクリートや、石畳などの硬い地面を長時間歩いた場合、肉球が乾燥してしまうことがあります。
洗いすぎや拭きすぎ:肉球を頻繁に洗ったり、ゴシゴシ拭いてしまったりすることで、皮膚の油分が必要以上に削がれたり、過度な刺激を受けることで肉球が乾燥しやすくなります。
アトピー性皮膚炎、自己免疫疾患:アトピー性皮膚炎や何らかの自己免疫疾患の猫は、肉球にも症状がでることがあります。
加齢:シニア猫は成猫に比べて皮膚の新陳代謝が落ち、良好な肉球の状態を維持しにくくなる場合があります。それによりひび割れなどを起こすことがあります。
栄養不足:偏った食事や、皮膚に必要な栄養素が不足している場合にも、肉球に症状が出ることがあります。
肉球が乾燥したりひび割れを起こすと、痛みや出血を伴う可能性があります。早めにケアしてあげましょう。
② 外傷(ケガ)
植物のトゲや種などが刺さってしまったり、小石が食い込んでしまったりすることで、痛みや出血を起こすことがあります。また、真夏のアスファルトや砂浜、マンホールによる火傷や、冬の融雪剤による炎症にも注意が必要です。
外から帰ってから急に肉球を舐めるようになった場合には、足の裏をよくチェックし、動物病院を受診しましょう。
また、爪が伸びすぎると肉球に刺さってしまうことがあるので、定期的にチェックしましょう。
③ 指間炎
肉球の間や指の間には分泌物や汚れが溜まりやすく、放置してしまうと炎症を起こすことがあります。
④ アレルギーやアトピー性皮膚炎、自己免疫疾患
何らかのアレルギーや自己免疫疾患などがある場合、肉球や指の間は症状が出やすい部位の一つです。
肉球を頻繁に舐めている場合には、動物病院で相談してみましょう。
⑤ 腫瘍
肉球や指の間にも腫瘤(できもの)ができることがあります。肉球が腫れていたり、出血・化膿がみられたり、足を触るのを嫌がるような様子がみられた場合には、早めに動物病院を受診しましょう。
⑥ 血栓塞栓症
心臓病などを患っている猫では、体の中で血栓が作られ、それが血管に詰まってしまうと肉球にも症状が現れることがあります。肉球の色がおかしい(紫色、白色など)、肉球や足が冷たい、足が突然動かなくなったなどの症状が見られたら、早急に動物病院を受診してください。
おうちでできる肉球のケア
肉球のトラブルを回避するには、おうちでも肉球の周りをこまめにチェックしてあげることが大切です。
肉球の周りの毛や爪が伸びすぎていないかどうか、最低でも月に1回程度を目安にチェックしましょう。肉球や指の間が汚れている場合には、やわらかい濡れタオルなどで優しく拭いてあげましょう。
また、肉球の乾燥が気になる場合には、食事や生活環境(湿度や床材など)を見直してみましょう。保湿クリームなどを使ってみる場合には、安全性の高い猫用の肉球保湿クリームを選びましょう。
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福永 めぐみ
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