新しい命を授かり、赤ちゃんを家族に迎えることは、なにものにも代え難い喜びです。家族全員が赤ちゃんの誕生を祝し、ともに暮らすことを待ち望んでいることでしょう。それは我が家の愛猫とて、同じ気持ちのはずです。
ただ、人間と猫は異なる種であることから、妊娠〜出産〜育児の過程の中で気をつけなければならないポイントもあります。今回は、飼い猫がいる家庭が赤ちゃんを迎える際の注意点について考えてみましょう。
猫の感染症、赤ちゃんに感染するのを防ぐには?
猫と暮らす上で、真っ先に気になるのは感染症、なかでも「トキソプラズマ症」ではないかと思います。「トキソプラズマ症」は、「動物に起因する感染症(人獣共通感染症:ズーノーシス)」のひとつであり、
妊娠初期に感染・発症すると胎児にも影響する可能性
があります。実際には猫から感染する確率はかなり低いとされていますが、それでも、猫を外の土や砂で遊ばせないことや、生肉(とくに豚肉)を食べさせないようにするなど、用心するに越したことはありません。
「トキソプラズマ症」に限らず、
感染症予防のために猫の室内飼いは必須
です。また、
“過剰な触れあいを控える”
“手洗いをまめに行う”
“猫の体と飼育環境を清潔に保つ”
“排泄物を速やかかつ適切に処理する”
“定期的な駆虫”
などを心がけましょう。妊娠期には、専門医による感染症についての検診を受け、その結果が陰性であればよし、感染が疑われるようでしたら速やかな治療が必要となります。
猫アレルギーって何だろう?
もう一点、猫との同居で気になることに、猫アレルギーの問題があります。猫アレルギーは、主に
猫の体毛や皮膚片、フケ、唾液、尿、便などが赤ちゃんの体内に入り込むことで発症
します。とくに春と秋の、猫の毛が生え変わる換毛期と呼ばれる時期には注意が必要です。
赤ちゃんに湿疹やくしゃみ、鼻水などが頻繁に見られるようなら、猫アレルギーが発症している可能性があります。専門医にて検査の上、発症が確認されれば、猫に接触させないという対策をする必要があります。
室内飼いの場合、接触を完全に断つことは難しいかもしれませんが、その際は
「猫と赤ちゃんの居住スペースを分ける」
「定期的にシャンプー・トリミングを行う」
「掃除を頻繁に行い、空気清浄機などで室内を清潔に保つ」
などを心がけましょう。猫と赤ちゃんの双方が快適に過ごせる環境作りが大切です。
これらの対応はまた、赤ちゃんだけでなく、たとえば結婚などで新たなパートナーを迎える際にも大切なポイントとなります。
うちの猫、もしかして赤ちゃんに嫉妬してる?
赤ちゃんと愛猫の同居に際してもう一つ、猫の感情面を考えたいと思います。赤ちゃんを迎えることを、猫がどう捉え、感じているかについては確かなことはわかりません。ただし、猫が突然の環境の変化を嫌う動物であることは考慮する必要があります。自分に対する飼い主の愛情を、赤ちゃんに取られたと感じる可能性も排除できません。
妊娠が判明した時点で、猫に「新しい家族」の存在を認識させていくことも、考えておきましょう。ベビーベッドや赤ちゃん用のおもちゃを事前に用意し、”赤ちゃんのいる環境”に慣れさせておくことで、実際の同居に向けたリハーサルとなります。出産後には、赤ちゃんが病院にいる段階で赤ちゃんの泣き声を録音し、猫に聞かせる、あるいは赤ちゃんの匂いが付いたものを猫に与えるなどの対応も有効かもしれません。
赤ちゃんを家に迎えた後には、先に記した通り、
赤ちゃんと猫の居住スペースを完全に分けることが必要
です。猫に、「ここは赤ちゃんのテリトリーなのだな」と認識させることで、無用なトラブルを避けることができます。赤ちゃんと猫、どちらにも負担のかからないような環境づくりをしてあげることが大切です。赤ちゃんが成長し行動域が広がり、好奇心から何でも触り、口に入れる時期を迎えてからは、よりいっそうの注意が必要になります。
猫と赤ちゃんがいる暮らし、その素敵な未来のために
さて、以上に述べたような対処をしながらも、それでもなお「猫との同居は難しい」という判断もあるかもしれません。赤ちゃんの猫アレルギーが重篤である場合や、妊娠中に体調面や精神面で、猫を飼い続けることの負荷が大きすぎる、などのケースです。
しかしながら、妊娠をしたことや赤ちゃんを家族に迎えることが、そのまま「猫との別れ」を意味するわけでは決してありません。飼い主さんが猫との暮らしを負担に思うことは、猫にとっても不幸です。
猫との同居に向け、最大限の努力をすることが飼い主さんの大きな責任となります。そして赤ちゃんにとっても、身近なペットがいる生活は、かけがえのない経験や思い出をもたらしてくれることでしょう。
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