猫ちゃんが高齢者をやさしく癒す〜アニマルセラピーの現場から〜

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アニマルセラピーとは

日本でも最近よく耳にする「アニマルセラピー」ですが、欧米では1960年頃から医療現場で取り入れられています。日本では動物と触れ合うことで癒し効果を得られる「動物介在活動」が主流ですが、ほかにも医療の現場や学習プログラムにも取り入れられています。
アニマルセラピーは目的によって、大きく分けて3つに分類することができます。

1.動物介在療法(Animal Assisted Therapy:AAT)

医療従事者の主導で行われる補助療法を指します。精神的、身体的機能、社会的機能の向上など、治療を受ける人にあわせた治療目的を医療従事者が設定し、作業療法士など専門の医療チームの指導のもとで行われます。欧米でアニマルセラピーと言えばこの動物介在療法を指します。

2.動物介在活動(Animal Assisted Activity:AAA)

動物とふれあうことによる情緒的な安定を主な目的にした活動。現在日本で行われているアニマルセラピーの多くはこの動物介在活動です。

3.動物介在教育(Animal Assisted Education:AAE)

小学校などの教育現場で動物たちと触れ合いながら命の大切さを子供たちに学んでもらう活動を指します。学習プログラムのひとつとして取り入れる学校も少しずつ増えています。

シニア夫婦と猫動物と触れ合うことで情緒的な安定を得る動物介在活動は、高齢者福祉の現場でも積極的に取り入れられているようです。辛いことがあったり、とても疲れたりした時、猫ちゃんのふわふわした体をなでていたら気持ちがスーッと落ち着いた…、そんな経験を持つ人は多いはずです。実はこの時、脳内伝達物質であるドーパミンやオキシトンシンの分泌が増えるため、「楽しい」という感情がわいてくるのです。さらに、副交感神経が優位になり、リラックスした状態になります。こうした精神的効果とともに、動物を介して会話が増えるなどコミュニケーションを豊かにする効果も望めます。

2匹の猫ちゃんが活躍中

今回は動物介在活動を実践されている施設のひとつ、川崎市にある「通所介護施設 猫のいる家」におじゃましました。ここでは代表を務める吉田至徳さんが飼われている2匹の猫ちゃんが利用者の皆さんと一緒に過ごしています。
2匹それぞれに役割があり、2歳になるてんちゃんは店長、8歳のティナちゃんは理事長という肩書きがついています。てんちゃんは少々人見知りですが、慣れてくるとすりすりしてくれるそうで、てんちゃんと仲良くなることを楽しみに通われる方もいらっしゃるとか。一方、理事長のティナちゃんはとても人なつこくて、誰にでも抱っこされたり、なでられたりしながら、みんなを癒してくれています。

ティナちゃんは誰にでも抱っこさせてくれます。ふわふわで柔らかい抱き心地はみんなの心を癒してくれます。

ティナちゃんは誰にでも抱っこさせてくれます。ふわふわで柔らかい抱き心地はみんなの心を癒してくれます。

2004年に介護の専門学校を卒業した吉田さんは、約10年の介護施設勤務を経て、昨年5月に「猫のいる家」をスタートさせました。
「デイサービスの会社を立ち上げようと考えた時、施設の特徴が欲しいと思いました。そんな時、猫が好きだけどもう自分で世話ができないから飼えなくなった、という高齢の方の話を聞いたのです。同時に、もし介護施設に猫がいたら嬉しいのに…という声も耳にしまして。高齢のため猫を飼うことをあきらめてしまったけど、本当はそういう方こそ猫とのふれ合いが必要なのではと思い、猫と一緒に過ごすことができる『猫のいる家』をつくりました。

吉田さんはまずはご自身が飼われている猫ちゃんを施設に連れてくることからスタートしました。2匹ともスコティッシュフォールド種で、性格はとても穏やか。「動きものんびりしているので、高齢者と一緒に過ごすには適しているようです」と吉田さんは言います。

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「また、スコティッシュフォールドに限らず、猫は独立心の強い動物なので、必要以上に近づかず、人間と適度な距離感をとりながら過ごすことができます。でも慣れてくれば抱っこしたりなでたりすることもできますので、利用者それぞれのスタンスで猫と触れ合うことができます。そうした点でも猫はアニマルセラピーに適しているのではないでしょうか。

また猫はきれい好きで、常にグルーミングして自分の体を清潔に保ちます。これも抵抗力の弱っている高齢者と過ごすには大事なポイントです。

ちょっぴり人見知りのてんちゃんですが、皆さんのそばにいるのは大好き。てんちゃんを中心に、みなさん話が弾みます。

ちょっぴり人見知りのてんちゃんですが、皆さんのそばにいるのは大好き。てんちゃんを中心に、みなさん話が弾みます。

認知症治療のサポートにも

施設には認知症を発症した方も訪れます。重症度にもよりますが、猫ちゃんと触れ合うことで明らかな変化が見られると吉田さんは言います。
「猫を見るとみなさん自然と笑顔になるようです。通常の介護施設では見ることのできない、まるで子供のような笑顔を見せてくださいますし、一所懸命猫に話しかける方もいらっしゃいます。家ではこんなにたくさん話すことはないのに、とご家族の方が驚いたこともあります。猫のかわいさももちろんですが、触った時のふわふわした感触などがきっといい刺激になるのでしょうね。

吉田さんはこれからも「猫がいる家」でこうした動物介在活動を続けていきたいと言います。
「利用者の方がご家族の負担を減らすためではなく、自らの意思で楽しい時間を過ごすために通えるよう、介護施設の形態もどんどん変化していかなければいけないと考えています。猫と一緒に過ごせる施設を作るのもその取り組みのひとつだと思います。ただしどんな猫でもいいというわけではありませんし、衛生面でも気を配らなければいけないこともたくさんあります。今は自分が猫を飼っているからできますが、いずれは猫の頭数を増やすようになれば、管理の面などクリアしなければいけない問題も増えてくると思います。でも、猫と触れ合うことでみなさんが少しでも笑顔になれるなら、できる限り続けていこうと思います。」

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おじゃまさせていただいたこの日、70〜80代の女性が6名ほど「猫のいる家」を利用されていました。おしゃべりに花が咲くその足もとを2匹の猫ちゃんが悠々と通り過ぎていきます。聞けば皆さん猫好きで、猫がいるからこの施設を選んだという方もいらっしゃいました。

なでたりじゃらしたりしながら、みなさんいつも猫ちゃんと触れ合っています。「横を通ると、ついつい構いたくなってしまうんですよ」と利用者は言います。

なでたりじゃらしたりしながら、みなさんいつも猫ちゃんと触れ合っています。「横を通ると、ついつい構いたくなってしまうんですよ」と利用者は言います。

「昔は猫を飼っていたのですが、今は飼えなくなってしまい淋しく思っていましたので、ここに来るのが楽しみです。前は別な施設に通っていたのですが、猫がいると聞いて、こちらに来るようになりました。来るとまず猫ちゃんがどこにいるか探してしまいますね。かわいい猫ちゃんと一緒に過ごすのは本当に楽しいです。」(77歳・女性)

「表情がかわいいので、見ているだけで癒されます。ティナちゃんはとても人なつこくて、膝に乗ってくれたりするので、それがとても嬉しいです。」(86歳・女性)

利用者の方はもちろん、猫がいることでスタッフの疲れが癒されることも多いと言います。2匹の猫ちゃんの存在が利用者のみなさんに笑顔をもたらし、施設内の空気を明るくしていることは間違いありません。

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‘デイサービス・通所介護 猫のいる家’
神奈川県川崎市中原区中丸子536-5
TEL:044-431-3327
FAX:044-431-3328
営業時間:月〜土曜日 9:00〜19:00
定休日:日曜日

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