猫はなぜなわばりを作るのか?

見つめる野生猫

猫にとってなわばりはとても大切なもの。その理由をご存知でしょうか?

食糧確保のため、一定のなわばりが必要

野生の猫の食糧は、ネズミなどの小動物です。
1匹の猫が生きていくためには、一定の数の獲物が必要です。
そう、なわばりとは、一定の数の獲物を確保するための“狩り場”なのです。

猫の狩りのスタイルは、獲物にこっそりと近づいて仕留めるというもの。
この狩りの方法は、複数より単独で行うのに向いていますし、そもそも獲物が小さいため、分け合って食べるほどの量はありません。
ですから猫は、単独で生活し、各々のなわばりを持つという生活をしています。

都会では獲物のほかに、人間が与える餌など、ほかの食糧源もあります。そのため、なわばりは小さくて済みます。一方、食糧源が獲物しかない田舎の猫は、広いなわばりを持つ必要があります。ある国のデータでは、都会の猫のなわばりは800㎡であったのに対し、森林にすむ猫のなわばりは1,680,000㎡にも及ぶという報告もあります。なわばりは毎日パトロールしなければならないため、広すぎるのも大変そうです。

ちなみに飼い猫の場合、毎日ごはんがもらえるので、なわばりは家の中だけで十分。「家の中だけで狭くてかわいそう」というのは人間の勝手な思い込みで、食糧が満たされていれば、「別に気にしないニャ」という気分なのかもしれません。

子孫を残すために、オスは広いなわばりを持つ

野生猫
さて、生きるために十分な食糧が得られていれば、それだけですべてOKというわけではありません。自分の子孫を残すという課題が猫にはあります。繁殖期に異性と出会うのは、重要な目的です。特にオスは、なるべくたくさんのメスと交尾して子孫を多く残したいという本能があります。

野生猫・野良猫のなわばりの簡略図。ABCはそれぞれ別のメス猫。

野生猫・野良猫のなわばりの簡略図。ABCはそれぞれ別のメス猫。

上はメス猫のなわばりの図です。実はなわばりは完全に独立しているわけではなく、少し重なっている部分があります。ふだんはお互い出会わないようにしていますが、この共有部分では夜間に猫の集会が開かれたりします。

オスは、メスより広いなわばりを持ちます。一説によると、オスのなわばりはメスの3.5倍の広さといわれています。オスのなわばりは、下の図のように、複数のメスのなわばりを覆うような形で存在します。

Dはオス猫のなわばり。ABCのメス猫のなわばりを覆うような形で存在します。

Dはオス猫のなわばり。ABCのメス猫のなわばりを覆うような形で存在します。

Dのオスは、Aのメスが発情したらあちらへ行き、Bのメスが発情したらそちらへ行き……というふうに、せっせと移動して子孫繁栄に努めます。
そういった本能があるため、オスはメスよりなわばり意識が強いといわれるのです。

メスどうしは多頭飼いしやすいのに対し、オスどうしは多頭飼いしにくいといわれるのは、オスのなわばり意識が強いため。オスどうしはメスを争うライバルになるため、闘争本能が芽生えやすいのです。

メスどうしは多頭飼いしやすいのに対し、オスどうしは多頭飼いしにくいといわれるのは、オスのなわばり意識が強いため。オスどうしはメスを争うライバルになるため、闘争本能が芽生えやすいのです。

母猫が成長した子猫を追い出すのは、なわばりを守るため

お乳をやり、毛づくろいをし、愛情込めて育ててきた子猫を、ある日突然、母猫は威嚇します。これは自然下で見られる「子別れ」といわれる行動で、十分に成長した子猫を自分から突き放し、なわばりから追い出すのです。
突然威嚇された子猫は、はじめ訳がわからず、一生懸命母猫にすり寄ろうとします。が、母猫はものすごい剣幕で威嚇しつづけるので、子猫は仕方なく、母猫のなわばりから去ります。

「子別れ」の理由は、共倒れを防ぐためです。そのまま母猫のなわばりに複数の子猫が居続けたら、獲物が足りなくなって共倒れしてしまいます。それを防ぐため、母猫は成長した子猫を追い出し、新しいなわばりを作らせるのです。自然の摂理ですが、今までかわいがっていた子猫を追い出す心理はどういったものなのか、突き放されてひとりでの生活を始める子猫はどういった気持ちなのか……興味は尽きません。
ちなみに、オスの子猫はより遠いところへ移動してなわばりを作るといわれています。これは近親相姦を避けるためといわれています。

子猫がメスの場合、母猫は追い出さず、一緒に次の子猫を育てることも。十分な食糧がある場合は子猫を追い出す必要がなく、逆に子育てを手伝ってくれるメリットが得られるためと考えられています。

子猫がメスの場合、母猫は追い出さず、一緒に次の子猫を育てることも。十分な食糧がある場合は子猫を追い出す必要がなく、逆に子育てを手伝ってくれるメリットが得られるためと考えられています。

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日本動物科学研究所所属・編集者&ライター 富田園子
日本動物科学研究所所属・編集者&ライター 富田園子
幼い頃から犬・猫・鳥など、つねにペットを飼っている家庭に育つ。
猫雑誌の編集統括を8年務めたのち、独立。
哺乳類動物学者の今泉忠明氏に師事。
現在は5匹の猫と暮らす。
編集・執筆を行った本に『マンガでわかる猫のきもち』『幸せな文鳥の育て方』(大泉書店)、『フレブル式生活のオキテ』『シュナ式生活のオキテ』(誠文堂新光社)、編集を担当した本に『猫とさいごの日まで幸せに暮らす本』(大泉書店)などがある。5匹の猫と暮らす愛猫家。
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