猫伝染性腹膜炎(FIP)-コロナウイルスの突然変異とは?

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

猫伝染性腹膜炎(FIP)は、ウイルス性疾患のひとつで、この病気には未だ有効なワクチンがありません。
コロナウイルスというウイルスが原因なのですが、通常このウイルスは病原性が弱く、感染してもなにも症状がでない場合がほとんどです。日本にいる猫ちゃんの多くは、一度はこのウイルスへの感染経験があるといわれています。

これだけ聞くとあまり怖いウイルスではなさそうですね。
しかし、このウイルスの恐ろしいところは「突然変異」にあるのです。猫の体内で突然変異をおこしたコロナウイルスが、猫伝染性腹膜炎(FIP)という病気の原因ウイルスとなります。
コロナウイルスに感染し突然変異が起こってから実際に発症するのは、感染猫の10%に満たないといわれていますが、発症すると根本的な治療が難しく、致死率も高い病気です。
なお、3歳までの猫と10歳以上の猫での発症率が高くなっています。

●考えられる突然変異の原因

残念ながら詳しいことは未だ解明されていませんが、ウイルス側の要因と感染した猫側の要因が関係していると言われています。
猫側の要因というのは、免疫状態のことです。免疫は、ストレスや他のウイルス感染などによって変化します。バランスを崩した免疫はウイルスに対して過剰なアレルギー反応を起こし、それが発病につながっているのではないかと考えられています。

こんな症状が出たら気をつけて

ウエットタイプ:体腔(体の空洞部分)を標的にするもの

腹膜炎を起こし、お腹に水(浸出液)がたまってふくれてくるのが特徴です。
元気、食欲はなくなり、発熱を繰り返してぐったりすることもあります。
胸に炎症が起こると、今度は胸に水がたまってしまうので肺が圧迫されて呼吸が苦しくなります。

ドライタイプ:臓器を標的にするもの

お腹や胸に水がたまったりはしません。
腎臓や肝臓に硬いしこりができて、臓器の機能障害が進行します。
脳に病変が起こると神経症状が出ますし、目に炎症が起こって濁ってくる場合もあります。

診療方法

猫の症状により猫伝染性腹膜炎が疑われた時には、猫の血液を検査センターに送り、猫コロナウイルスの抗体価を調べます。抗体価が高いと、この病気の可能性が強く疑われますが、確定診断が非常に困難であり、抗体価だけでは診断に至らないこともあります。そのため、お腹や胸にたまった水や血液、便、臓器、脳脊髄液などにウイルスそのものが存在するかどうかを追加で検査することもあります。

原因となるウイルスに効果をしめす治療は確立されておらず、インターフェロン(ウイルスの活性を弱め、猫の免疫を上げる)による治療にある程度期待はできますが、多くは支持療法に頼らざるをえません。定期的にお腹や胸にたまった水を抜いたり、必要があれば点滴入院も検討するなど、症状に応じた治療が行われます。

診療費はいくらぐらい?

FIP(滲出型)であることが既に診断されており、適宜腹水抜去等の処置が必要なケースにおける通院例です。
症状が改善するまで週1回程度のペースでの通院が必要となります。
状況によっては2~3日に1度の通院が必要となる場合もあります。
診療項目 単価 数量 金額
再診料 ¥500 1 ¥500
処置料(腹水抜去) ¥2,000 1 ¥2,000
皮下注射
(インターフェロン)
¥3,000 1 ¥3,000
皮下注射(抗生剤) ¥1,500 1 ¥1,500
内服薬 ¥100 14 ¥1,400
合計 ¥8,400

この診療明細書はアイペットが保有するデータを元に獣医師が作成した診療費の参考例となります。診療費用・内容の平均・水準を示すものではありません。

予防

猫が集団で生活している場所には、コロナウイルスを持っている猫が多く見受けられます。また、最初に述べたように現時点では有効なワクチンもありませんので、予防は非常に難しいです。(欧米ではコロナウイルスのワクチンが使用されていますがその有効性には疑問が残り、日本で発売される可能性は低いと思われます)
学術的に言えば、母親からの免疫が無くなる5~7週齢のときに感染することが多いため、4週齢の離乳の時期に子猫を大人の猫から離し、隔離すればコロナウイルスからの感染は免れることが可能と言われています。

ただし、社会化を学習する時期ですので早期に集団から離して生活させることに関しては賛否両論あります。本当に猫のためを思うのであれば意見が分かれるところです。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitterでにゃんペディアをフォローしよう!

Anicli24院長 三宅亜希
Anicli24院長 三宅亜希
電話で犬猫の医療相談を行う「電話どうぶつ病院Anicli24」の院長。日々、ペットオーナーからの電話相談に対応している。
トップへ戻る